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販促もブランディングもAmazonで。コカ・コーラ「新ラベルレスボトル」のフルファネルキャンペーン

 コロナ禍で社会のあらゆるものが大きく変化した。オンラインストアのAmazon.co.jpでもまた、消費者の購買行動に変化があったという。ad:tech tokyo 2022のオープニング基調講演「リテールとブランディングをつなぐAmazon Adsのマーケティング」では、社会環境や生活者の変化を踏まえて、Amazonでのフルファネルキャンペーンに取り組んだ日本コカ・コーラの事例が紹介された。本記事では、Amazon Ads Japanのカントリーマネージャー・石井 哲氏と、日本コカ・コーラのEC事業部ディレクター・太田貴史氏による講演をレポートしていく。

Amazon Adsと日本コカ・コーラ、両者に起きた変化

石井:「Amazonは商品を買う場所」というイメージに変化が起きています。

Amazon Ads Japan カントリーマネージャー 石井 哲氏
Amazon Ads Japan カントリーマネージャー 石井 哲氏

石井:調査によると、75%は商品を調べるためにAmazonを訪問しており(Tiniuti and Elite SEM、2020年)、また78%が商品名ではなくカテゴリーなどのキーワードを使って検索していることがわかっています(Marketplace Pulse、2020年)。さらに74%の方は、Amazonに来訪した目的の商品とは別の商品を見つけて購入しています(マクロミル、2020年)。

 このような傾向を踏まえて、ブランディングや商品の認知向上などを目的にAmazonに出稿する広告主様も増えてきました。本日はその中でも、Amazon Adsと協業して、高い効果を発揮した日本コカ・コーラのキャンペーン事例を紹介します。太田さん、よろしくお願いします。

 さっそく太田さんにお伺いします。コロナ禍前後で、日本コカ・コーラのEC事業に変化があったと聞いていますが、どのような変化がありましたか。

太田:ショッパー、つまりお客様の購買行動に変化が起きました。おうち時間の増加で自宅での飲用が増加し、オンラインでの購入が定着しました。Amazonでは、自宅にストックしておくために、ケースを複数点まとめて購入する方も増えています。

日本コカ・コーラ株式会社 EC事業部ディレクター 太田 貴史氏
日本コカ・コーラ株式会社 EC事業部ディレクター 太田 貴史氏

別チームと協業のカギは共通認識を持つこと

石井:Amazonで実施したキャンペーンでは、コカ・コーラ社のブランドチームとも協業されたと聞いています。ブランドチームと、太田さんが率いるEコマースチームの協業にはどのような背景があったのでしょうか。

太田:Amazonのキャンペーンでブランドチームと連携し、フルファネル施策を展開した背景に、コロナ禍の影響で、特にリアルの場においてショッパーの獲得に苦戦していたことが挙げられます。また、今年3月以降の緊急事態宣言が解除された際には、オンライン購入での成長が鈍化傾向となっていました。

 購入頻度の伸びの頭打ちがその要因でした。そのため、ブランドチームとEコマースチームの連携を強化し、新規獲得を加速してオンラインでのビジネス成長が必要だと考えていたところ、タイミング良く、Amazon Adsからフルファネルのマーケティング施策の提案をいただき、実施に至りました。

石井:とはいえ、ブランドチームとEコマースチームでは異なる目標を追っている中で、協力していくのはかなり大変だったのではないでしょうか?

太田:おっしゃる通りです。KBIはともに売上の最大化ですが、EコマースチームではAmazonなどの購買ポイントに近く、効率の高いローワーファネル向けの施策に注力していました。つまり、ROAS(広告の投資対効果)を重視していました。

 一方でブランドチームは、幅広い層へリーチを最大化できるデジタルメディアへ注力するなど、それぞれ施策が分離していました。そのため、コカ・コーラのファンを増やすための共通認識を持つことがとても重要でした。

 また、連携するにあたって、ブランドチームにフルファネル施策のメリットや具体的な成果を伝える必要がありました。そのため、コカ・コーラ社内では、2021年に試験的に実施したコーヒーブランド「ジョージア」のキャンペーン事例をEコマースチームから他ブランドチームに紹介しながら、フルファネル施策をスケールさせる提案をしていきました。

 ジョージアのキャンペーンでは、Amazon.co.jpでのコーヒーカテゴリーの売上シェアが2位から1位へ上昇。ROASではアッパーファネルで1.3(KPI:1.0)、ミドルファネルで1.8(KPI:1.5)、ローワーファネルでは4.1(KPI:3.0)と、各ファネルで向上しました。加えて、新規の購入者は施策実施前の3.6倍となり、大成功と言える結果でした。この成功が、他ブランドチームへの展開の決め手になりました。

Amazonのキャンペーンで意識したのは「ストップ・ホールド・クローズ」

石井:施策において意識されたのはどのような点だったのでしょうか?

太田:ストップ・ホールド・クローズの考え方に基づいてキャンペーンを設計していきました。「ストップ」ではお得に買えるクーポンをバナーで表示して、目に留めてもらうこと、バナーをクリックしてもらうことを意識しました。ここではまずショッパーにベネフィットを提示することを目的としています。

 次の「ホールド」では、ブランドの世界観を表現できるカスタムランディングページをAmazon.co.jp内で制作し、これを活用してブランドや商品の理解を促しました。

 そして「クローズ」では商品詳細ページのコンテンツを拡充して購入を促す施策を展開していきました。

石井:認知から検討、購買に至るまでの流れを意識したキャンペーンを行ったのですね。アッパーファネルからミドルファネル、ローワーファネルまでフルファネルでAmazonを活用いただいています。もう少し詳しく聞かせていただけますか。

太田:たとえば、コカ・コーラが誕生した5月8日に合わせて「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」の新しいラベルレスボトルを訴求するキャンペーンをAmazonで実施しました。

 アッパーファネルでは、特定のブランドを意識せずにAmazon.co.jpを訪れるショッパーや食品・飲料を探しているショッパーに対して、「最大20%OFF」や「Amazon先行発売」を訴求するクリエイティブを制作して、Amazonのトップページに出稿しました。新ラベルレスボトルの認知と興味・関心を促す施策です。

石井:お得に買えるクーポンは魅力的ですね。Amazonのトップページの広告をクリックしたお客様は、その後どういった体験ができるのでしょうか。

太田:Amazonのトップページの広告をクリックすると、ショッパーはコカ・コーラ独自のカスタムランディングページ(特設ページ)に遷移します。カスタムランディングページの上部でクーポンを知らせるバナーを表示して、セール中であることを継続して認知してもらいつつ、先駆けて、かつお得にお買い物ができるように案内しました。

 このバナーをクリックするとランディングページの下のほうにある、「セール関連商品一覧」に遷移して、あとは「カートに入れる」をクリックしてお買い物ができます。

 ただ、興味深いのは、ランディングページの分析をしていくと、Amazonのトップページをきっかけにリーチしたアッパー層のショッパーの多くが、ページをさらにスクロールして、新ラベルレスボトルのデザイン性や特徴を紹介したコンテンツも閲覧していることがわかりました。

 Amazonのカスタムランディングページでは、ショッパーが自分にとって有益な情報を、積極的に発見しようとする、そんな動きが見られます。

石井:単に商品の購入だけではく、ブランドが伝えようとしているストーリーやメッセージにも目を向けているお客様がいるということですね。ミドルファネル向けの施策はいかがでしたか?

太田:ミドルファネルでは、炭酸飲料を買いに来ているショッパーに対してAmazon DSPを用いてAmazonの内外で広告を展開し、カスタムランディングページに訪れるよう設計しました。

 ここでは、中段にある「オケージョン訴求、つまり飲用シーン」のクリック率が最も高い結果がでています。アッパーファネルのショッパーよりもコカ・コーラブランドの認知度が高い可能性があることから、「新ラベルレスボトルのデザイン性や特徴」よりも、具体的な飲用シーン、たとえばドラマを観ながらや、ゲームプレイ中、パーティーや食事といったシーンに惹かれたと考えています。

 最後にローワーファネルでは、Amazonで「コカ・コーラブランド」を閲覧しているショッパーには、Amazon DSPを使って広告を展開しました。既にコカ・コーラ ブランドファンである可能性が高いため、カスタムランディングページは介さずに、あえて直接コカ・コーラの新ラベルレスボトルの商品詳細ページへ訪れていただけるように設計しました。

Amazon Adsのクリエイティブチームとの協業でブランディングと購買を両立

石井:今回のキャンペーンでは、Amazon Adsのクリエイティブチーム「Brand Innovation Lab」とも協業していますが、いかがでしたか。

太田:カスタムランディングページは、ショッパーの購買体験に大きな影響を及ぼすので、その制作に長けた「Brand Innovation Lab」に依頼できたのは良かったです。Amazonのショッパーを最も理解されているのはAmazon Adsだと考えていたので。

石井:Brand Innovation Labは、Amazonが提供する様々なサービスの特性を理解して、カスタムランディングページやFire TV、Twitchなどで展開する広告クリエイティブを制作しています。Amazon Adsの制作力を評価いただけて大変嬉しく思います。

太田:EC事業部だけでランディングページを制作すると、単なる商品説明や価格の安さを表現したページになることが少なくないですし、それだけではメッセージ性が不足してしまいます。しかし、Brand Innovation Labのクリエイティブは、2021年にジョージアブランドで行った施策も含めて、社内から高い評価を得ていました。

 また、今回のコカ・コーラの新ラベルレスボトルは世界観を伝えるのが非常に難しい商材でした。このキャンペーンでもBrand Innovation Labと議論を重ねながらカスタムランディングページを制作した結果、ショッパーからも好評で、ブランドチームも満足していました。

フルファネルで大きな効果 成功の裏に隠された努力

石井:コカ・コーラのキャンペーン結果はいかがでしたか。

太田:まずAmazonの炭酸飲料カテゴリーにおいて、1位から4位にコカ・コーラブランドがランクインしました。

 さらに驚くべきことに、ROASでもアッパーファネルは1.9(KPI 1.0)、ミドルファネルは4.9(KPI:3.0)、ローワーファネルでは13.0(KPI:10.0)という、目標を大きく超える結果を記録しました。

 Amazon Adsと実施したキャンペーン成果が社内でも認められ、コカ・コーラブランド以外の5つのブランドで同様のキャンペーンを実施し、いずれも良い結果がでています。

石井:やはりKPI、KBIの異なるブランドチームとEコマースチームが協力していくのは大変な部分もあったと思いますが、いかがでしょうか。

太田:確かにフルファネルのキャンペーン施策は相当なリソースが必要でした。また、Amazon.co.jp上のページが上手く切り替わるか、在庫がきちんと用意できているかなど気を張る場面があったのも事実です。

 しかし、コカ・コーラ製品の製造・販売を行うコカ・コーラ ボトラーズジャパンとも連携して需要予測の作成や在庫管理を徹底していました。さらに、商品詳細ページなどの売り場を魅力的に見せて、訪問いただいたショッパーにアクションしてもらえるように促すなど、ファンダメンタルズ面も強化していたため、上手くキャンペーンを展開できました。

 結果として大きな成果を残せたので、ブランドチームもEコマースチームも実施して良かったと考えています。

キャンペーンによって深まったコミュニケーション

石井:ジョージアの事例やコカ・コーラの新ラベルレスボトルの事例を通じて、Eコマースチームとブランドチームの連携の仕方に変化はありましたか。

太田:Eコマースチームとブランドチームが協業したことによって、関係が密接になり、コミュニケーションが活発になりました。またAmazon Adsはテレビや新聞といったトラディショナルなメディアと比較すると、効果がわかりやすく、何が売上につながっているかの要素を分解して理解できます。

 Amazonのキャンペーンから得られたインサイトをもとに、ブランドチームと一緒に施策をレビューして改善点を探り、反映するといったサイクルができています。

石井:私たちAmazon Adsはコカ・コーラ社のEコマースチーム、ブランドチームと協業し、今後もフルファネルでの施策設計のお手伝いができたらと思っています。太田さんは来年に向けた目標はありますか?

太田:我々としては単に一過性の売上を作るのではなく、持続的な成長を目指しています。ニールセンの調査によれば、Amazonのユニークビジター数は約5,000万人とされています。そのうちコカ・コーラ商品をAmazonで購入している方はまだ300万人超に過ぎません。

 現状ご購入いただいているショッパーから継続的にご購入いただけるよう努めるとともに、Amazonでコカ・コーラ商品を購入したことのない4,700万人へのアプローチ方法を模索し、より良い購買体験を提供していきたいと思っています。

お問い合わせ窓口

 Amazonでの広告掲載を検討しているお客様は、こちらの窓口からお問い合わせください。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/16 10:30 https://markezine.jp/article/detail/40522