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MarkeZine Day 2024 Spring

なぜ生成AI?LIFULLとパルコが語るブランディング文脈でのAI活用のポイントと可能性

 ChatGPTの登場を皮切りに、あらゆる分野で世界的な潮流を生み出しつつある生成AI。国内においても様々な活用が模索される中、LIFULLとパルコの両社は、ブランディングキャンペーンや広告制作を通じて生成AIによるクリエイティブを発表し、反響を呼んでいる。MarkeZine Day 2024 Springではそれぞれのプロジェクトを担当した、LIFULLの畠山 大樹氏と、パルコの手塚 千尋氏が登壇。実際にAIを活用したからこそわかる手応えや、活用時におけるポイントなどを語り合った。

「時代のコンテクスト」は、やはり“AI”だった

 2023年が「AI元年」とも呼ぶべき1年となったことは記憶に新しい。各社がその活用法を模索する中、いち早く企業ブランディングの文脈で生成AIを使ったクリエイティブを発表したのが、LIFULLパルコだ。

 本セッションでモデレーターから最初に投げかけられたのは、「なぜ生成AIを活用したのか/何をしたのか」という2つの質問だ。パルコの手塚氏は背景として自社の広告の歴史を挙げる。

株式会社パルコ 宣伝部 部長 手塚 千尋氏
株式会社パルコ 宣伝部 部長 手塚 千尋氏

 パルコは1969年のオープン以来、広告に力を入れてきた。パルコの広告では2つのことを大切にしてきた。それが「パルコでしかできない表現」であること、「時代のコンテクストを組み込むこと」だ。2023年は渋谷パルコの50周年にあたり、広告のテーマを「伝統と革新」に定めた。

「2023年のコンテクストはやはりAIだと思います。そこで、生成AIを使ったクリエイティブに挑戦することにしました」(手塚氏)

時代を反映し続けてきたパルコの広告
時代を反映し続けてきたパルコの広告

 クリエイティブクリエイターには、元ファッションデザイナーで過去にパルコ広告を手掛けた経験のある木之村美穂氏を起用。AIデジタルクリエイターには、「Ai-Editorial - Christian Guernelli」を起用し、モデルも含め、撮影は一切せず、プロンプトだけを使ってビジュアルとムービーを作成した。ムービーやナレーション、音楽に至るまですべて生成AIを活用した作品となっている。

生成AIを使用した「2023 PARCO HAPPY HOLIDAYS」

 L.A.を拠点に活動するクリエイターたちと打ち合わせを重ねながら、6ヵ月ほどかけてクリエイティブを完成させていったという。メイン画像2種類とサブ画像5つを制作し、それをもとに実際の装飾物を作りパルコの実店舗へと落とし込むなど、いつもとは逆の工程でキャンペーンを進めていった。

 手塚氏が今回目指したのは、AIでなければできない表現だったという。

 「ムービーで採用した『空間が無限に広がっていく表現』は、AIならではだと思います。また、作品の完成度があまりに高すぎると、AIで作ったことに気づかれない可能性があります。そこで違和感を残すため、わざとモデルの口を不自然に動かすといったギミックを加えました」(手塚氏)

 「生成AIで制作した広告」は話題を呼び、PR会社の換算によれば、前年のクリスマス広告媒体換算比で1,000%超にもおよぶメディア露出があったという。さらに同作品は、総務省が後援するAMD(一般社団法人デジタルメディア協会)アワード'23で優秀賞を獲得。まさに時代を切り取ることに成功した。

生成AIで10,000パターンの「フワちゃん」を作る

 LIFULLが取り組んだのは、「しなきゃ、なんてない。AI10,000変化」キャンペーンだ。同社では2018年からタグライン「しなきゃ、なんてない。」のもと、コミュニケーションを行なってきた。

株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドコミュニケーション部 コーポレートブランドユニット長 畠山 大樹氏
株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドコミュニケーション部 コーポレートブランドユニット長 畠山 大樹氏

 今回の取り組みはタレントの「フワちゃん」を起用し、1万種類の画像を生成。LIFULLの公式Xアカウントをフォロー&リポストすると、1万種類の画像から1枚がランダムで届くというもの。そこには、様々なシチュエーションからお届けする「しなきゃ、なんてない。」のメッセージが添えられている。

 多様なフワちゃんの姿を見せることで、「しなきゃ、なんてない。」が意図する「既成概念にとらわれない生き方」をよりわかりやすく伝え、生活者の自分ごと化を狙った。

 今回のキャンペーンに至った理由は何か。畠山氏によれば、これまでテレビCMやSNS、オウンドメディアなどを通じて企業広告を展開してきた中で、3つの課題が浮かび上がってきたという。

 「課題のひとつ目は『しなきゃ、なんてない。』に込めた多様性や、既成概念にとらわれない視点をわかりやすく表現すること。ふたつ目は、『自分らしい暮らしへの関心』をコミュニケーションに取り込むこと。最後に、こちらから一方的に発信するのではなく、生活者の中で波及していくような設計ができないだろうかと考えました」(畠山氏)

 今回のキャンペーンでは生成AIを用いたクリエイティブにおける「視点の転換や意外性」。膨大なバリエーションを量産できる「多様性」。そこにXが持つ「話題性、拡散性」をかけ合わせることでの効果を期待したという。

 実際の工程について、畠山氏は次のように解説する。

 「このプロジェクトは、戦略立案から計画設計、実行に至るまで、一貫して社内中心で行ないました。まずはAIで約10万枚の画像を生成。そこから絞り込んだ2.5万枚に対して熟考と議論を重ね、最終的に1万枚を選定。公開へと至りました。その結果、発表会も含めて多くのテレビやWebメディアに取り上げていただき、SNS上でも大きな反響を呼ぶことができました」(畠山氏)

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/11 10:55 https://markezine.jp/article/detail/45123

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