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第101号(2024年5月号)
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海外メールマーケティング最前線
レコメンド/フォローアップメールで成果を挙げる5つの成功事例

 Amazonに代表されるように、海外ではレコメンドメールなどによる販促活動が主流となりつつある。特にEC系のサイトではさまざまな施策が講じられている。今回は、海外での5つのメールマーケティング事例をピックアップして紹介。日本での状況などについて、メール配信システム「MailPublisher」を提供するエイケア・システムズの北村伊弘氏に解説していただいた。【メールマーケティング特集ページ、絶賛公開中!】

ブランド×製品カテゴリのレコメンドメールでクリック率向上

 最初に紹介する事例は、コスメ、ヘアケア、ネイルケア製品を扱うECサイト「DiscountBeautyCenter.com」。約340のブランドを取り扱い、30,000を越すアイテムを販売している。

DiscountBeautyCenter.com
DiscountBeautyCenter.com

 このサイトでは、2001年よりメールでのニュースレター配信を開始。最近では、アメリカのEメールソリューションベンダーとの共同プロジェクトで、動的にレコメンドコンテンツを配信するEメールキャンペーンを実施し、成功している。

 このキャンペーンでのメールはHTMLで作られ、テンプレートは、上からヘッダー、トップ4ブランドの製品紹介エリア、購入傾向の強い6カテゴリの売れ筋製品の紹介エリア、クーポン情報、フッターという構成になっている。

 レコメンド時の指標として、購買履歴に基づいて顧客ごとに「売上上位4ブランドの嗜好性」と「6つの製品カテゴリにおける嗜好性」を割り出した。そのうえで、「ブランド別の製品紹介エリア」と「カテゴリ別の売れ筋商品紹介エリア」のコンテンツを各人の嗜好性ごとに変え、メールを出し分けた。1度の配信で、4ブランド×6カテゴリ、計24通りのメールを配信したことになる。30,000アイテム以上を扱っているので、アイテム単位であれば、本来24通りではなく膨大な組み合わせができるが、この場合、あらかじめテストを行った結果用意した数パターンのHTMLに絞った。

 この施策で特徴的なのはヘッダー下のメインイメージにあたるクリエイティブをブランドごとに作りこんでいる点があげられる。これによって、顧客の嗜好に合わせてファーストビューが変化し、より強い印象を与えることに成功している。また、メール本文だけでなく、件名についても顧客の嗜好するブランドの要素を加えている。

 この結果、クリック率は3.4%だったものが5.8%に向上。セグメントによっては、クリック率30%にまでアップしたものもあったという。また、通常、ECサイトでは、売上アップのために値引きキャンペーンをすることが多いが、この施策により、顧客に適切な商品を提案できたため、大幅な値引きをせずに売上を向上させることができた。

POINT : 日本ではこれから、モバイルでの応用は期待大!

 このケースは、「ブランドの嗜好性」に着目した点が効いていると思います。購入履歴から「興味がありそうなカテゴリの製品」を案内するというのはよくありますが、このサイトは美容専門のECサイトということで、(女性、美容に興味があるなど)既にある程度ユーザーはセグメントされているので、製品カテゴリのみでのレコメンドというのは限界があります。

 レコメンドメールは、総合小売のように幅広い商品を扱っているサイトの方が効果的と言われていますが、このケースのように少し専門的なサイトでも、何を基準にレコメンドするか、という指標次第で十分応用可能です。特に、ブランドの嗜好性に基づいたレコメンドは、効果が高いようです。

 当社の顧客でも、HMVジャパン様をはじめとする複数のECサイトでレコメンドメールは活用されており、購入履歴によるレコメンドだけでも高い効果が出ていると聞いています。先進的な企業は実施していますが、日本ではまだまだこれからという感じです。しかし、実施してみたいという声は、多く頂いています(参考記事:店舗とEC、双方での集客に成功 パーソナライズしたメルマガで成果を挙げるHMVジャパン)。

 また、日本では特にモバイルでのメールマーケティングが活発ですが、モバイルではさらにレコメンドメールの効果は高くなるのではないのかと考えています。端末の特性上、情報量に限りがありますので、いかにファーストビューでレコメンドしていくかがPC以上に重要になってきます。デコメによるリッチな表現など、ユーザーの興味を引くための工夫はこれまでも行われてきましたが、近いうちにモバイルメールはもう一段階進化すると思います。

 配信システム側の話でいえば、例えば弊社が提供しているMailPublisherは、もともと外部のシステムとのデータ連携をした配信を得意としていますが、さらに企業側が保有する解析データとの連携をより簡単にできるようなシステムの開発を進めています。ユーザーの嗜好性の多様化、市場の発展による競争の激化、技術の進化という点から考えても、今後は、よりレコメンドメールの活用一般化が進んでいくのではないのでしょうか。

メールをサービスの主軸に、数千パターンのカウンセリングメールを配信

 続いての事例は、75万人以上の会員を持ち、ガーデニングケア商品を扱うサイト「Scotts」。

Scotts
Scotts

 このサイトでは、入会時に郵便番号(居住エリア)や育成する植物、ガーデンのタイプなど細かな情報を登録してもらうことで、個々の環境や嗜好に応じてカスタマイズされたガーデニングに関するアドバイス情報のメール配信を行っている。

 例えば、「お住まいの地域は、今年はあまり雨が降らなかったので、○○の栄養が不足しています」といった、会員の個々の環境に合わせた育て方を動的に生成しており、そのパターンは数千通りに及ぶ。会員は、このメールによりガーデニングに対する意欲が向上するため、サイトでの購買につながっていくという仕組みだ。

 入会時に入力項目が多いとわずらわしいと思われることが懸念されるが、会員もセールスだけではなく、専門的な情報を得られるため、各項目の入力も面倒ではなくなる。個人の嗜好に応じた販促メールの場合、商品をダイレクトに伝えるものが多いが、この事例の場合はユーザーにメリットのある情報を提供して満足度を上げることが販促の効果を生んでいる。

POINT : アイデア勝負! 実施は意外に簡単!

 このサイトほど詳細なものはまだありませんが、花粉症の人向けに『あなたの地域は今日花粉がすごいからマスクを忘れずに』といった、会員の地域属性とマッチした天気コンテンツを差し込んで配信している例はあります。特にモバイルでは、電車の遅延情報や今日の運勢をメールで送るなどといった施策をされている企業さんもいます。

 メールマガジンといえば、配信ごとに担当者が本文を作って送信するのが一般的ですが、システムをうまく活用すれば、外部の情報を組み込んで自動的に配信することも可能です。そういう意味では、このサイトのようなメールマガジンは簡単に作れます。ユーザーにメールマガジンをサービスとして活用してもらい、販売促進につなげている良い例だと思います。

アクセス解析結果を基にしたターゲティングメールで売上アップ

 近年注目を集めているのが、ユーザーの行動履歴(Click Stream)を基にしたターゲティングメールだ。Jupiter Researchの調査によると、欧米では41%のメールマーケターが行動履歴ベースのメール配信を企画しているという(参考リンク:ClickZ「Clickstream Analysis and E-Mail Marketing」)。また、同報配信型に比べて効果も出ており、9倍の売上、18倍の利益を達成しているというデータもある。

同報配信、シナリオ設定、属性別、行動履歴と
それぞれ異なるタイプのメールのコンバージョン率や売上、利益を比較した表
(※調査結果を基に編集部で作成)
同報配信、シナリオ設定、属性別、行動履歴とそれぞれ異なるタイプのメールのコンバージョン率や売上、利益を比較した表(※Jupiter Researchの調査結果を基に編集部で作成)

 こうしたユーザーの行動履歴を基にしたターゲティングメールを実施しているサイトの1つが、釣りやキャンプ用品を扱う「Bass Pro Shops Outdoors Online」だ。

Bass Pro Shops Outdoors Online
Bass Pro Shops Outdoors Online

 このECサイトの会員数は100万人を超えており、従来は会員登録時に選択する「ユーザーの興味があるカテゴリ」に応じてメールを配信していた。新しい試みとして、サイト内の商品を閲覧したが、購入に至らなかった人々に対し、数日後にフォローアップメールを送るという施策を行い、効果をあげている。

 「単に商品を見た」というログを基にメールを送るのではなく、例えば釣具のリールなら「同じ価格帯の3種のリールを見た人に同価格帯のリールを案内する」といったロジックを組み、それにマッチしたユーザーに対して配信しているのがポイントだ。この施策により、値引きをせずに効果をアップすることに成功している。

Bass Pro Shops Onlineが設定したターゲティングのロジック
Bass Pro Shops Onlineが設定したターゲティングのロジック

POINT : ロジック設定が重要、国内でも一般化が進んでいます

 単純にリールを1点のみ見たというだけでは、そのユーザーがそもそもリールを欲しがっているかどうかも分かりません。また、欲しがっていたとしても、いくら位のリールを探しているのかという予算感が分からないため、間違ったオファーのメールを出してしまうことも考えられます。この様に、それぞれのユーザーに対して、どんな情報を提供するかというロジック次第で、メールの効果は変わってくると思います。

 システム面でいえば、この事例のように、ログ解析ツールとメール配信システムを連携させる手法は、米国では比較的多いようです。日本でも、既に情報サイトなどで取り組んでいるところもあります。

カート離脱者へのフォローメールで高い反応を獲得

 同じく訪問者の行動履歴をベースにしたメールで効果をあげているのが、ベビー用品のECサイト「diapers.com」だ。

diapers.com
diapers.com

 このサイトでは、カート離脱者へリマインド目的のメールを送る施策が成功している。2007年のMarketingSherpaや2008年のmarketliveの調査では、50%~60%の訪問者がカートに商品を入れたものの、購入に至らずに離脱しているという結果が出た(参考リンク:InternetRetailer.com「Cart abandonment rises as online shoppers compare prices, MarketLive says」)。

 カート離脱の主な要因としては、「セッションが途切れるといったテクニカルな要因」や「競合サイトとのコスト比較のため」といったことが考えられる。サイトとしては、いつまでもカート内の情報を保持しているとデータが溜まる一方なので、カート状況の保持期間を短めに設定しているところが多いが、一方でカートに商品を入れるということは、ある程度購入意欲の高い顧客である可能性が高いため、フォローすることでの効果を期待できる。

 diapers.comの顧客の場合、育児中であるため、落ち着いてPCの前に座っていられないことも考えられる。これに対する施策として、カート離脱後の一定期間にフォローのメールを送信。メールにあるURLをクリックすると、離脱する直前の状態のページから購入プロセスを再開できるようになっている。このフォローメールは他のメールキャンペーンと比べて129%の反応があり、メール内の各URLのクリック率も24%と高い結果となっている。

 同じようにカート離脱者へのフォローアップに着目した施策を行っているケースとして、バッグ専門のECサイト「eBags」がある。このサイトでは、会員登録していない人でもメールアドレスさえ登録しておけば後から購入手続きを続けられる「Save your Cart」フォームを用意している。これにより、サイトはフォローメールを配信でき、ユーザー側には「商品を買いそびれて一から選び直し」という状態を回避できるというメリットを提供している。

eBagsの商品ページ
メールアドレスを入力すると、カートの状態を保持したURLがメールで送られてくる
eBagsの商品ページ。メールアドレスを入力すると、カートの状態を保持したURLがメールで送られてくる

POINT : サービスとしてのフォローメールを心がける、毎度の値引き注意が必要

 こうしたフォローメールでの注意点として、販促っぽい内容ではなく、あくまでも『まだ注文の処理が完了していません』といった通知サービスとして送ることが重要です。一定のデータ保持期限を設けて告知するのも、購入の後押しをするうえで必要だと思います。

 また、毎回値引きをしないという点もポイントです。毎回行うと、ユーザーが必ず値引きがあると思い、適正な価格での販売が難しくなってきますので。「たまに」の値引き案内は、クリック率を上げるには効果的だと思います。

 カート離脱者への取り組みは、企業様の方で、カート離脱者の情報をご用意していただければ、弊社のMailPublisherでも実施することが可能です。消費者の中にはメルマガを嫌がる人もいるので、サービスの一環としたフォローメールなどを使ってメールの活用範囲を広げていただければと思います。今後、こうした施策を自動化していけるかどうかが、メール配信システム開発における重要なテーマの1つになっていくと思います。

フォローメールのサンプル
「セールスと受け取られるメール」ではなく、「リマインドサービスとしてのメール」を
心がけることが重要
フォローメールのサンプル。「セールスと受け取られるメール」ではなく、「リマインドサービスとしてのメール」を心がけることが重要

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/07/16 16:23 https://markezine.jp/article/detail/8381