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MarkeZine Day 2024 Spring

移り気でタイパ重視な消費へどう対応する?資生堂、タイミーと考える「リキッド消費」時代のマーケティング

 購買の流動性が高く、所有欲が低く、商品選択の省力化を重視するいわゆる「リキッド消費」が広がり、マーケターの注目を集めている。それに伴い、従来通りのブランディング、マーケティングの効果が下がりつつあるという課題も浮上しており、この新しい消費行動への対応が求められるようになっている。MarkeZine Day 2024 Springでは江端浩人氏をモデレーターに、資生堂ジャパンの北原 規稚子氏とタイミーの木村 真依氏がリキッド消費時代に求められる考え方や、ブランディングの必要性を、具体的な事例を交えて語り合った。

拡大する「リキッド消費」とは?

 近年、「リキッド消費」という消費スタイルが広がっている。この概念は2017年にイギリスのマーケティング学者、バルディとエクハルト氏によって提唱され、論文内では「はかなさ」「アクセスベース」「非物質的」という要素で特徴づけられている。

はかなさ:商品・ブランドと消費者の関係が短命で刹那的なこと

アクセスベース:シェアリング、サブスクリプションなど所有権の譲渡がない取引

非物質的:消費者が形のあるモノに対して無頓着

 これと対になるのが、従来の消費スタイルである「ソリッド消費」だ。ソリッド消費は「永続的」「所有ベース」「物質的」と定義される。今まではモノを買って消費するソリッド消費が主流だったが、Z世代を中心にリキッド消費の傾向が年々強まっていると江端氏は解説する。

iU大学 教授/江端浩人事務所 代表 江端 浩人氏
iU大学 教授/江端浩人事務所 代表 江端 浩人氏

 「モノを所有するのではなく、必要なときだけ利用する消費スタイルを選択する消費者が増えました。たとえば、モノを買うときもCtoCプラットフォームで売ることを前提に購入し、商品自体ではなく買値と売値の差額を価値と捉える。このように、所有行動から共有行動への移り変わりが顕著に見られるようになりました」(江端氏)

 では、なぜ今リキッド消費が広がっているのか? デジタルテクノロジーの進化により、モノを持たなくても生活を楽しむことが可能になった点が大きいが、その他に次のような背景も考えられると江端氏は説明する。

リキッド消費が広がる背景
  1. 流通マーケットの整備
  2. 情報過多により、時間が少ない=タイパ志向
  3. SDGsなどのエコ意識の高まり
  4. 共同所有/利用品への抵抗の低さ

 1つ目はタイミーやメルカリのような、時間やモノを販売・消費する流通マーケットが整備されたこと。2つ目は情報過多の中で上手く情報を捌くために、タイムパフォーマンス(タイパ)と呼ばれるような、時間効率を意識する人が増えたこと。

 3つ目は、SDGsなど環境への意識が高まり、モノを消費して捨てる機会を減らそうと考えるようになったこと。4つ目は、衛生上の配慮やメーカーの努力もあり、利用品への抵抗が低くなっていること。

 こうした変化から、流動的で、手軽で、よりスピーディーな消費が求められるようになったと考えられる。

リキッド消費時代にブランディングは有効か?

 流動的で、手軽で、よりスピーディーな消費とはつまり、これまでのマーケティングで取り組んできたようなブランド価値を高める施策が効きにくくなっているということだ。資生堂ジャパンの北原氏も、ブランドに向き合う中でZ世代を中心にリキッド消費の拡大を感じていると語る。

資生堂ジャパン株式会社 マーケティングリレーション本部長 北原 規稚子氏
資生堂ジャパン株式会社 マーケティングリレーション本部長 北原 規稚子氏

 「以前は『このブランドが好きだから、特定のブランドでアイテムを揃えよう』という人が珍しくありませんでした。しかし現在、Z世代を中心にメイクポーチの中にはドラッグストアで買ったプチプラのコスメもあれば韓国コスメもあり、奮発して買った6,000円のアイシャドウも入っています。」(北原氏)

 この状況では、これまで通りテレビCMや雑誌を使ってブランドを訴求し、購入意欲を高めるようなアプローチをしても思うような効果は得られない。しかし、消費行動が変わったからといってブランディングを疎かにしていいわけではない。変わらず大切だと北原氏は強調する。

 「変わったのは、ブランドの意味の作り方。効率的にお客様の中に意味を作っていくという意味では、どういう時代であってもブランディングは必要だと考えています」(北原氏)

 複数の事業会社でブランディング・マーケティング・PR担当を務めてきたタイミーの木村氏もこの考えに賛同する。

株式会社タイミー BX(Brand Experience)部長(PR・ブランディング・ブランドエディター統括) 木村 真依氏
株式会社タイミー BX(Brand Experience)部長(PR・ブランディング・ブランドエディター統括) 木村 真依氏

 タイミーは、スポットワーク市場を牽引するスキマバイトサービスだ。まさにタイパを重視し、時間を有効活用し手軽に働きたいというユーザーが利用する。人々は複数のバイトサービスを利用していることを前提に、それでも選ばれるブランドへとタイミーを成長させるため、フェーズに合わせたブランドエクイティ活動を展開していると木村氏は説明する。

 「ブランディングはタイミーのビジョンとミッションを伝え、実感いただくための手段です。そのために、まずはブランドを認知、連想してもらう活動を積み重ねます。次の『ブランド品質』フェーズで、ブランドに対して信頼・共感を実感してもらうブランディング活動に入ることで併用やリプレイスを防ぎ、最終の『ブランドロイヤルティ』フェーズで、唯一無二のブランドとして愛着を持ってもらうことを目指して取り組んでいます」(木村氏)

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/03 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45122

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