本記事は、2024年4月刊行の『MarkeZine』(雑誌)100号に掲載しているものです。
【100号特集】24社に聞く、経営構想におけるマーケティング
─ 「競争」から「共創」へ 日本マーケティング協会の新定義が示す、これからのマーケティングのあり方(本記事)
─ 5つの柱でお客様の期待を超える マーケティングとイノベーションを実現する
─ 1年で大きく進化し「生活者に近づいた」味の素のマーケティング 新組織設置の狙いとその成果を聞く
─ 「マーケティング部も 営業部も存在しません」全社を巻き込むCX推進部がイーデザイン損保の経営を動かす
─ 目指すは「シェアNo.1」ではなく「唯一無二」、花王がマーケティング戦略を変えた背景
─ 「良いコンテンツを作れば自然と広がる仕組み」を目指して──「ABEMA」の経営とマーケティング
─ 苦境から回復、さらには飛躍を目指して。「お客様の実感価値」の解像度を上げるJTBのマーケティング
─ 生活者インサイトを捉えて新たな文化・市場を創造する 資生堂においてマーケティングが果たす役割
─ セブン-イレブン・ジャパンがマーケティング本部を新設 加盟店も含めた全社の“ハブ”を目指して
─ 「ファッションの『こと』ならZOZO」というイメージ醸成を目指す、ZOZOの戦略と取り組み
─ 常識破りの戦略で圧倒的な成長を。「KANDO(感動)ドリブン」で駆け上がっていくトリドールの構想
なぜ今か―― 34年ぶりの刷新を決断した背景
――はじめに、今回の定義刷新の背景についてお聞かせください。
河野:デジタル化が進み、マーケティングが大きく変わりつつある中、定義の見直しを求める声は以前からあがっていました。また、世界最大のマーケティング組織であるアメリカ・マーケティング協会が定義の刷新を重ねている一方で、日本マーケティング協会は1990年の制定以来、変わらず同じ定義を使っていることにも課題を感じていました。しかし、長期にわたって広く使われている定義を変えるとなると、各方面に大きく影響が出てしまうのではと考えていたのです。
そのような中、コロナ禍で消費者行動も企業側のビジネスモデルも大きく変わり、DXは喫緊の課題に。また、近年は環境問題への意識の変化がマーケティングにも影響を与えるようになりました。
やはり、このタイミングで変えなければならないと、2023年6月に理事長に就任した恩藏直人先生のリードのもと刷新を決断しました。
―― 具体的にどのように刷新を進めたのでしょうか?
高石:恩藏理事長を含む11名の委員から成るマーケティング定義委員会を立ち上げました。アカデミックと実務の領域に携わる方々がバランスよく参加されたこともあり、バラエティ豊かな視点を取り入れられたと自負しています。
議論は4回の全体本会議と3回の小委員会の往復作業を通して実施。積極的な意見交換を経て、以下の新定義を作り上げました。
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
注1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注3)構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。